農業相続人

 「農業相続人」とは、相続により農地等を取得し、相続税納税期限【※1】までに農業を開始し、その後もその農地で引き続き農業を営んでいくと認められた人のこと。


 「農業相続人」は、被相続人からその所有農地を相続した場合、「農地の農業投資価格【※2】」で評価した価額を超える部分に対応した相続税額の納税を猶予される、という特例を受けられます。


 ただし、三大都市圏の特定市における市街化区域内農地の場合、納税猶予の適用を受けられるのは専ら生産緑地に限られます。(令和6年4月現在での税制取扱い)


 相続税の納税猶予特例を受けた「農業相続人」が、その後 終身営農継続するなど一定の要件を満たすと、その納税猶予されていた相続税は免除されます。


 ( 特定市以外における市街化区域内農地の場合、営農継続20年で免除。(令和6年4月現在) )


 【※1】被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内
 【※2】農地が恒久的に農業の用に供されるとした場合での農業収入に見合った農地価格




 しかしながら、「農地相続税の納税猶予特例」の適用を受けた「農業相続人」が、その後においてその相続農地の一定割合部分について転用したり、耕作放棄したり、他者へ売買・贈与・貸付け等をしてしまうと、


原則として納税猶予特例の適用が解除(猶予期限が確定)され、利子税とともにその納税猶予額分を納付する必要が生じます。


 ただ、納税猶予特例の適用を受けている(市街化区域外農地の)相続人が「農地バンク」に対して相続農地を預け「農地バンク」がその地域の担い手農家へ貸付け(「特定貸付け」)した場合等に限っては、


(農業相続人本人による営農継続要件は失われるものの)納税猶予特例の適用解除事由とはならず、相続税の納税猶予特例がそのまま継続されることとなります。(令和6年4月現在)


 ※ なお、その場合「特定貸付け」した旨の「届出書」を、貸付けした日から2か月以内に税務署あて提出する必要があります。


 また、それ以降においても、納税猶予特例の適用を継続したい場合には、3年ごとに「継続届出書」を税務署あて提出することが求められます。




 また、農業者がその後継者に「農地の生前一括贈与」をした際に一定の要件のもとに認められる「農地贈与税の納税猶予特例」制度というものも存在しており、「農地相続税の納税猶予特例」の場合と同様の特例適用解除事由(猶予期限の確定事由)があります。


 農地相続税務に関すること、例えば「農地相続税・農地贈与税の納税猶予制度」「営農困難時貸付け制度」に関すること。「贈与税の相続時精算課税制度」と「小規模宅地等の特例制度」とは同時に両方は適用できないこと (令和6年4月現在) など。


 こうしたことについて、その詳細な税務取扱いにもし関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、農地相続に明るい税理士の方へのご相談をお勧めします。


 ただ、そもそも相続時に相続税が課税されるほどの多大な資産をお持ちの農業者(農地所有者)の方というのは、比較的少数派であるかもしれません。



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